よくある節税策~小技まとめ~中小法人編~

税理士仕事をしていると、「節税したいです!」「節税って何をすれば良いですか?」とご相談をいただくことが多いです。
「節税」という言葉がパワーワードすぎますよね。その言葉が独り歩きして、税理士であればその裏技持っているんでしょ!?というニュアンスでご相談をいただきますが、結論から言うと、

裏技はないけど、知っていると便利な小技集ならありますよ
という感じです。
また節税については書籍やYoutubeにもあふれるほど情報がありますが、情報の網羅性を担保するあまり、結局見にくいものとなってしまっています。
いろんな小技はあれど「みんな知ってるものは何なの?」程度のことをサクっと知りたい方が多いのではないでしょうか。(私でさえそんな感じ)
そこで、今回はその小技集、よくある節税策~中小法人編~をお届けします。
「節税」と「脱税」は異なります。つまり、租税回避目的で、制度が定める本来の趣旨から逸れて、法の穴をかいくぐるような行為は、脱税側の行為になります。当記事ではそのような趣旨を含んでいません。
一番大事なこと=無駄な支出をしないこと
「節税」を話す前に、一番大事だと思っていることを記載します。それは
無駄な支出をしないこと
「節税」と聞くと、税金が減ることばかりに目がいきますが、例えば20万円の税金を減らすために100万円の無駄な支出をしていたら、100ー20=80で結局80万円の無駄な支出をしていることになります。
いつかブランド強化のためにロゴをリニューアルしようと思っていたんだけど、今期利益がしっかり出ているから、やるか。
と
今期利益出ちゃったなー、こないだロゴをリニューアルしたばかりだけど、お金余ってるし、やるか。
では、話が違うということです。
どちらも経費化されて利益が減り税金も減りますが、後者は、本来であれば手元に残るはずだった80万円を失っています。
20万円の税金を払ってでも80万円の留保を残す(後に必要な投資をする)、ことこそが事業を成長させる秘訣だと思います。
「節税」と称して「浪費」に走る経営者様は本当に多いと感じます。
節税策には何がある?
下述について列挙していますが、詳細は「個人事業主編」に記述しています。ご参照ください。
■まず基本(最低限)
・青色申告をすること
・経費を漏れなく計上すること
■全員がやって損がない
・ふるさと納税
・家族分の医療費控除・交通費・薬代
・iDeCo
・小規模企業共済
・NISA
■場合による
・消費税の原則課税か簡易課税か
・社員への決算賞与
・家族の青色事業専従者給与
・会社員が副業をし、給与所得と事業所得の赤字をぶつけて相殺する
■課税の繰り延べに過ぎない
・経営セーフティ共済(倒産防止共済)
■節税にはなるが・・・
・少額減価償却資産の特例
・4年落ちの中古車購入
■かなり大胆な課税の繰り延べ
・航空機などのオペレーティングリース
・コインランドリー投資
■その他法人特有の節税論点
・下述
法人特有の節税論点
出張旅費規程
旅費規程を作ると節税になる、法人の経営者の方は、聞かれたこともあると思います。
なぜ旅費規程が節税なのか。超ざっくり説明すると、「所得税」の観点での節税策となります。
旅費規程を作って支給できるのが「出張手当(日当)」です。この日当が節税ポイントとなります。
日当とは、ざっくり言うと、出張中に発生する食費や通信費など少額の諸雑費を、実費精算していたら面倒なので固定額で支給するよ、という性質のものです。
この「日当」が、給与ではないので、貰った側に所得税がかかりません。なので、その分所得税が節税、ということになります。
この場合、会社としては当然経費扱いになります(旅費交通費などの勘定科目)。
詳細はこちらの記事にまとめています。
借り上げ社宅制度
社宅制度は、福利厚生の充実のみならず、税制面でのメリットがあります。給料増額よりも、同額の社宅を提供するほうが、双方にとってお得になります。
なぜ社宅が節税なのか。超ざっくり説明すると、「所得税」の観点での節税策となります。(こちらも)
会社が社宅費用を一定程度負担することで給与を下げ、結果的に、所得税・住民税・社会保険料が軒並み下がることによって手取りを増やすことから、トータルとして個人負担が減ってオトクになる、そんな仕組みになっています。
詳細はこちらの記事にまとめています。
社用車
業務で利用することが前提ですが、個人事業主では家事按分の対象となるものが、法人では全額経費処理になります。
詳細はこちらの記事にまとめています。
社長の生命保険
会社の経営者や役員の万一の際に備えられる法人保険。会社に起こりうるリスクに備え、退職金を積立てたり、従業員の福利厚生を充実させたりすることにもつながります。
法人保険とは、会社が契約して、会社の経営者や役員が被保険者となる生命保険や損害保険などのことを指します。
このうち、
・右記の養老保険(満期保険金受取人:法人、死亡保険金受取人:被保険者(遺族))※2分の1が損金計上(福利厚生費)
・最高解約返戻率が低い保険(返戻率に応じて損金計上割合が変化)
についてのみ、損金計上の余地があります。
つまり、節税目的で保険に入っても思うような成果が得られないため、
本来の目的で法人保険を検討した際に、損金性も頭の片隅に入れておいて検討する、という考え方がよいのではないかと思います。
おわりに
「節税」と称して「浪費」に走る経営者様は本当に多いと感じます。山梨県でも同様です。
もちろん適切な節税は大事です。
ただし、無駄な支出をして節税策に時間を割くよりも、自分の事業を伸ばし、しっかり利益を出して、適切な税金を払い、留保を残していくことも大事です。
そういった考え方も重要であるということ、節税と留保がセットで語られる記事もあまりなかったので、最後に書き記したいと思います。
この記事を書いた人

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公認会計士・税理士・ITストラテジスト
山梨県、仲田公認会計士・税理士事務所の代表です。「企業・経営者の町医者」をテーマに、経営の身近な相談相手でいたいと思っています。
強みは「クラウド会計と経営・ITに精通」「中からも外からも企業のことを熟知」「中小/ベンチャー/起業支援の実績」。
スノーボードとサッカーとブラックコーヒーとONE PIECEが好きです。
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