事業用・プライベートどちらも使うものは?→家事按分の処理を行います
開業したばかりの個人事業主や、少しでも節税できないか、と検討を始められた方が、調べて辿り着くのが「家事按分」です。
個人事業主は、事業に関係する支出であれば経費計上が認められているため、例えば自宅で仕事をしている場合、家賃や光熱費の一部も「事業を行う上で必要な支出」となり、経費計上が可能です。
ここで使うのが「家事按分」の考え方ですが、分かりやすいように整理してみたいと思います。
家事按分とは
家事按分とは、プライベートによる生活費と事業費が混在している費用を規定のルールで計算し、事業に使用した分を算出することをいいます。
例えば上述のように、自宅で仕事をしている場合、家賃や光熱費の一部を「家事按分」となり、経費計上が可能です。
家事按分でよく使われる経費項目5選
家賃
賃貸物件などで、仕事に使うスペースの割合分の家賃を、経費にできます。
例えば、2LDKのマンションの1室を仕事に使っている場合や、リビングの一部を作業スペースにしている場合など、全面積のうち、作業区画の面積の割合で按分して、経費計上することが多いです。
ただし、プライベート空間と事業スペースをはっきり分け、説明できる状態にしておく必要があります。
なお、持ち家の場合でも、事業で使うスペースの割合に基づいて建物の減価償却費、固定資産税、住宅ローンの金利、火災保険料を按分することもできます。ただし、事業用スペースの割合が大きい場合には、それに伴って住宅ローン控除の額が減額される可能性もあるため、ご注意ください。
水道光熱費
作業部屋の照明、エアコンなどに使う電気代も家事按分の対象になります。
ただし、水道代とガス代は家事按分が難しく、たとえば料理教室を開いている場合などは証明しやすいですが、デザイナーなど直接水道やガスを使う根拠が証明しにくい内容は、家事按分が難しいです。
例えば、使用時間や使用日数を目安に按分することが考えられます。家賃の按分のように正確な数字を出すことは難しいので、合理的な割合を掛けて計算することになります。
その合理的な割合とは、事業形態や内容により変わるため、根拠のある説明ができることが必要ですが、例えば、自宅兼オフィスを、1か月のうち、1日5時間×平日20日=計100時間を業務として使っている、などを決め、按分していきます。
通信費
クライアントや顧客との電話、インターネット上でのやりとりなど、事業に不可欠と証明できれば、携帯電話料金やプロバイダ料金も家事按分ができます。
按分については、水道光熱費と同じく使用時間や使用日数を目安に按分するのが良いかと思います。いずれも客観的に納得できる範囲内で、可能な限り合理的な割合を用いてください。
なお、水道光熱費は時間単位で按分でも、通信費は日数単位で按分としても構いません。税務署へより合理的に説明できる方法を選択ください。
自動車関連費
自家用車も、事業用に使っている時間があれば、家事按分して使うことができます。例えば、商品を運ぶためや取材の移動などに使った自家用車も当然対象です。
- 車両本体の購入代金
- ガソリン代
- 駐車場費用
- 高速代
- 車両保険料
- 自動車税
- 車検費用
などの費用も対象となります。
なお、高速代や駐車場費用など、明確に、その日は業務で移動し駐車した、のであれば、その該当費用については、100%事業用として経費計上可能です。
PCやディスプレイなど高額な事務用品
パソコン・大型ディスプレイ・コピー機などの高額な事務用品についても、家事按分の対象となります。
家事按分した割合を固定資産計上して、減価償却した費用が、経費となります。
まとめ
経費にすることは確かに有効な節税手段ですが、なんでも経費として計上しようとして家事按分するのはあまり得策ではありません。
なぜなら、合理的な説明の度を超して、無理に家事按分を行うと、それは課税逃れとして、税務署の指摘を受ける可能性があるからです。
また、純粋に家事按分の計算が面倒臭いです(笑)。
全てを家事按分するのではなく、比率の大きい電気代を家事按分して、説明が難しい水道代は諦めるなどの対策を練って賢く節税することがよいのではと思います。
いずれにせよ、税務署で質問された時には回答できるように、
- 家の間取り図は保管しておく
- 領収書や按分比率を算出したデータは必ず残しておく
- 作業した履歴をPCのログイン時間、ログアウト時間などで見えるようにしておく(とより良い)
- クライアントとのやり取りを通話履歴やメールで残すようにする(とより良い)
など、自己防衛の対策は、できる限りの範囲でやられておくことをお勧めします。
効率的な節税をしていきましょう!
この記事を書いた人
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公認会計士・税理士・ITストラテジスト
山梨県、仲田公認会計士・税理士事務所の代表です。「企業・経営者の町医者」をテーマに、経営の身近な相談相手でいたいと思っています。
強みは「クラウド会計と経営・ITに精通」「中からも外からも企業のことを熟知」「中小/ベンチャー/起業支援の実績」。
スノーボードとサッカーとブラックコーヒーとONE PIECEが好きです。
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