償却資産税申告とは?【ざっくり解説】

1年間で1月しか意識しない申告、償却資産税申告ですが、調べて・理解して・申告しても、次はまた来年なのでせっかく得た知識を忘れがちです。
そこで、申告時の注意点などを、ざっくりまとめてみました。
償却資産とは(概要)
- 事業の用に供することができる資産のうち、
- 土地・家屋「以外」の、
- 有形の固定資産で、
- 所得税法・法人税法の所得の計算上、減価償却の対象となる資産
です。
償却資産とは(詳細)
各自治体のHPに例示列挙がありますが、東京都を例にすると、都のHP には以下が載っております。
資産の種類 | 主な償却資産の内容 |
---|---|
構築物 | 駐車場の舗装、舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等) 等 |
建物附属設備 | 家屋に含まれないと判断された、受変電設備、中央監視制御装置、特定の清算又は業務用の設備 等 テナントの方が賃借している家屋に施行した内装・造作・建築設備 ←忘れがち |
機械装置 | 工作機械、木工機械、印刷機械、モーター、ポンプ等の汎用機械類、パワーショベル等自走式作業用機械、駐車場機械装置、各種製造設備、クリーニング設備、太陽光発電パネル(屋根材一体型を除く) 等 |
船舶 | 客船、遊覧船、貨物船、漁船、ボート、ヨット、釣船 等 |
航空機 | 飛行機、ヘリコプター、グライダー 等 |
車両運搬具 | 大型特殊自動車 等(自動車税、軽自動車税の対象となる車両は対象外) |
工具器具備品 | パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン等)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、衝立 等 |
申告対象者は?
1月1日時点で償却資産を所有する者、となります。
法人、個人事業主、不動産貸付をする個人、が対象です。
例えば令和8年1月31日期日の償却資産税申告をする場合、対象資産判断基準日は、「令和8年1月1日時点」となります。
申告書提出先は?
その償却資産が属する「市区町村」です。税務署ではありません。
申告書提出期限は?
1月末日です。
申告~納税までの流れは?
- 1月31日までに申告書を提出
- 市区町村側が償却資産の額を決定し、市区町村の台帳(償却資産課税台帳)に登録
- 市区町村が台帳を公示
- 登録内容に不服がある場合は申出を行う。なければ待つ。
- 毎年4月~6月上旬頃に送付される納税通知書を受け取る
※課税標準額が150万円未満の場合は納税の必要がないため、通知書も送付されない - 納期が来たら、届いた納税通知書に記載の金額について、実際に納付を行う
※納期は年4回(4月、7月、12月、翌年2月)であることが多い
税金の計算式は?税率は?
課税標準額(*1) × 1.4%(*2) です。
(*1)課税標準額は概算で計算したいときは「12月末時点での簿価」と思ってもらうのが簡単です(正確ではないです)。
正確には以下のように求めます。
- 償却資産の取得価額に減価率を乗じて、評価額を算定する
初年度…取得価額 × (1-減価率×1/2) =評価額
2年目以降…前年度評価額 × (1-減価率) =評価額
※減価率は原則として耐用年数表(財務省令)に掲げられている耐用年数に応じて、1年間に資産の価値が減少する割合を計算するものですが、地方税の扱いの上での計算方法なので、例えば残存価額の考え方などが異なります。- 各資産の評価額を、資産が所在する自治体ごとに合算した額である決定価格を算出する
- 決定価格の1,000円未満を切り捨て、課税標準額を求める
(*2)この1.4%は自治体によって変わりますが多くが1.4%ですので、簡単に計算したいときはそう覚えると良いと思います。
まとめると、
ざっくり知りたい場合は「12月末の簿価×1.4%で計算して、正確には自治体が計算した結果が通知されたら分かるんだな」くらい
の感覚が、大枠を捉える税金把握方法だと思います。
一般的によく迷うこと
対象外の考え方
減価償却をするのですが、
- 土地・建物など、固定資産税が別途掛かってくるもの
- 自動車など、別の税制が用意されているもの
は、別の仕組みで税金が課されるため対象外です。また、
- ソフトウェアなど、無形固定資産
も減価償却しますが、無形固定資産なので対象外です。
- 牛や馬、果樹その他の生物
も、生物は有形だが対象外となります。
ただし、観賞用、興行用その他これらに準ずる用途に供している生物については償却資産の対象になります。
30万円未満で一括経費処理したもの
悩ましいのが、
- 10万円未満の経費計上したもの
- 20万円未満の一括償却資産
が対象外なのは分かるのですが、
- 30万円未満で一括経費計上したもの(青色申告の「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を使った資産)
※20万円未満で一括償却資産とせず、この特例で一括経費計上したものも含む
は申告の対象になるということです。
30万円未満だと特例で一括経費処理しがちなのですが、実は償却資産税がかかります。これ、トラップです。
全額費用処理して安心安心としていたら、そもそも課税標準額×1.4%の償却資産税はかかりますし、仮に申告漏れがあれば延滞金など罰則が発生します。
30万円未満で経費処理してしまったものは固定資産台帳に計上を忘れがちなので、そうすると償却資産税の申告対象に入れ忘れがちです。

・20万円未満のものは、少額減価償却資産の特例で一括経費処理せず、一括償却資産として3年償却に
・20万円~30万円未満のものは、少額減価償却資産の特例を使わず、通常の減価償却処理をする
ことで、運用上、償却資産税申告の漏れを防ぐことができます。
※制度設計をこんなに複雑にしていたら、そりゃ当然起きうる漏れだと個人的には思います。なぜこんなに気を遣わなきゃいけないのかそもそも違和感あります。根拠法律が異なるが故なのでしょうか・・・
無意識な漏れを防ぐためにも、上記工夫をすることをおすすめしています。
「建物」勘定だが内装工事費
内装工事費は仕訳でも固定資産台帳でも「建物」として計上することが多く、「建物は償却資産税の対象外だったな」と覚えると、間違えます。
「別の仕組みで自治体に把握されて固定資産税の対象となる建物」が償却資産税申告の対象外となるわけなので、
登記をしない内装工事費は、「建物」勘定でも、償却資産税申告の対象となります。
150万円未満
課税標準額(全資産合計)が150万円未満の場合は課税されません。いわゆる、「免税点」と呼ばれる基準です。
ただし、ここで誤解されやすいのが、「150万円未満であれば申告不要なのか?」という点です。
課税標準額が150万円未満の場合は償却資産税が課税されませんが、資産の多少に関わらず申告が必要となります。
実務上どのように対応するかは諸々やり方があるため、税理士などに相談すると良いかもしれません。
おわりに
償却資産税申告書は、自治体が固定資産税を算出するにあたって、法人・個人の償却資産の所有状況を把握するために提出が求められます。
償却資産税申告書の記載方法は、自治体ごとに手引書が用意されていて計算式はシンプルですが、
上述のように種々のトラップがあるので、注意が必要です。
この記事を書いた人

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公認会計士・税理士・ITストラテジスト
山梨県、仲田公認会計士・税理士事務所の代表です。「企業・経営者の町医者」をテーマに、経営の身近な相談相手でいたいと思っています。
強みは「クラウド会計と経営・ITに精通」「中からも外からも企業のことを熟知」「中小/ベンチャー/起業支援の実績」。
スノーボードとサッカーとブラックコーヒーとONE PIECEが好きです。
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