名刺交換から経営指標の管理が始まるんだよ、という話(DX事例)

名刺交換。
ビジネスの場で一番最初にする行為ですが、
ただの挨拶でもなく、営業だけでもなく、
マーケティングを通り越して、企業が経営指標を分析する際に、有効に活用されている事例があります。

名刺交換、というアナログな行為も、ゴールを見据えて業務フローを見直し、DX手法を用いると、
他の業務フローとくっつけて、経営管理にまで紐づけることができます。

私が関わった、建設業の事例をご紹介したいと思います。

課題:社内に埋もれる名刺、「それ、早く言ってよ~」。

名刺は交換されると、だいたいが自分の名刺入れに行き、大きな組織の場合、第1営業部でも第2営業部でも営業に行ってしまった、なんて話もあったりします。

会社全体で名刺を共有できないの?
そんなニーズを捉えて大成長を遂げた名刺管理サービス。例えばSanSanなんかが有名です。

名刺が共有できるなら、その人へのアクセス履歴も管理したいな

名刺が一元管理されると、「ヒト」や「部署」や「会社」に紐づけて、自社がどういったやり取りを過去にしたか、アクセス履歴も管理したくなります。

そこで登場するのがCRM(カスタマーリレーションシップマネジメントシステム)です。Salesforce、Kintoneなんかが有名です。

アクセス管理ができるなら、営業をもっと強化できない?

そこで登場するのがSFA(セールスフォースオートメーションシステム)です。Salesforceなんかが有名ですね。

ここまではよくある話です。
そして昨今、マーケティングオートメーションという分野を追加することも当たり前になってきています。

名刺があって、営業ができる。間をつなぐマーケティングもなんとか強化できない?

そこで登場するのがMA(マーケティングオートメーションシステム)です。Adobe Marketo Engageや、Salesforce Account Engagement、SATORIなんかが有名です。

ここまでもまあまあある話ですが、
名刺交換~マーケティングオートメーションまでが綺麗になったので、他の業務フローも、これにくっつけて一元管理したくなってきました。
そこで、私の関わった建設業の事例ではこうしました。

営業の後の、プロジェクトの進捗・原価管理もやっちゃおうよ

ここは、Salesforceを使いました。
Salesforceにはオブジェクトと言って、ノーコードで業務システムを作ることができる部品があります。

営業の進捗管理ができることと同じように、プロジェクトの進捗管理ができるようにして、
原価管理については、別の原価管理システムから、RPAを介して日次データ移行をすることにしました。

営業情報も原価情報もあるということは、管理会計的に、利益額が算出できるということです。
つまり、経営指標が一元化されたこととなります。ここで、経営指標管理も、Salesforceでやっちゃえ!ということで、その機能もくっつけました。

経営指標管理もやっちゃおうよ

SalesforceのBI(ビジネスインテリジェンス)機能を使って、利益推移や受注目標管理、利益率などの財務指標も、ビジュアライズして見える・追えるようにしました。

ついでに、売上予測機能を付けたり、建設業なので安全管理系のワークフローをつけたりして、
全てSaaS上で一元的に完結する業務フローの構築に成功しました。

経営層も、マネジメント層も、現場も、入力も一度だし(ワンスオンリー)、見るのも同じシステムとなります。
まさに、建設業の業務フローのDXの実現ができた事例だと思います。

結論:こんなフローになりました

ただ、カタチだけでは現場は動かない。中身と魂が重要。

さて。
上記までは「キレイなカタチができたね」という話なのですが、
ココからが企業の内部を知る人間でないと分からないところです。
よくいるコンサルタントでは、上記までで終わりだと思います。

では実際、このカタチが企業内でうまく動くようになる大切なことは何か・・・。それはなんと・・・アナログな・・・

泥臭い草の根活動

です!
具体的に私がしたことは、

  • 全社会議で紹介
  • チーム単位の会議に5分だけ時間をもらい、質問の場(という名の、最初は文句を受け付ける場)を設定
  • パワーユーザ になる人に味方になってもらう(どの企業・チームでも、「この人がエース」という目立つ人がいる、その人!)
  • 使わざるを得ない環境を作る(例えば、稟議のワークフローの中に組み込む など)
  • 「●●通信」のような定期的な使い方発信
  • 偉い人が参加する会議で使用する
  • PCにシールを貼って社内を歩き回る
  • 使っている人はイケている、感を出す

「コンサルタントを入れたけれど、意味がなかったな」とよく言われるのは、ほぼ全てこの社内運用がうまくいかないからだと思います。

どんな綺麗な業務フローも、どんな良いシステムも、使われないと意味がないですからね。
実際は、どんなカタチを作るかよりも、この運用の工夫が重要で、
地道で泥臭い草の根活動を続けることこそ、会社を変えるために最も必要な活動だと思います。

絶対に、最初は煙たがられ、一部からは嫌われますが、社内で味方を作り、巻き込んでいって、変革するしか道はありません。

復習

最後に、必要な要素を、復習です。

  • 経営指標分析・財務分析はゴール
  • バリューチェーンからゴールに関連する束を抽出、実現可能そうなサービスを探す
  • 実現可能性、コスト、運用の楽さ、+αの可能性、
  • 全てのバランスの取れるサービスを選定
  • あとは試行錯誤で突き進む=想定以上の効果
  • 成果を上げるために情報感度を上げておく
  • 結局最後は泥臭い草の根活動

DXという文脈で業務フローを変革するには、
・コンサルタント的に業務を俯瞰で見る「鳥の目」
・現場的に業務を細部で見る「虫の目」
・経営企画部的に流れを読む「魚の目」
どれも必要だなと、感じた事例でした。

これに会計や人事などバックオフィスを掛け算したところのDXは、最も得意とするところかもしれません。
興味ある方はぜひお問合せください!

この記事を書いた人

仲田 峻
仲田 峻
公認会計士・税理士・ITストラテジスト

山梨県、仲田公認会計士・税理士事務所の代表です。「企業・経営者の町医者」をテーマに、経営の身近な相談相手でいたいと思っています。
強みは「クラウド会計と経営・ITに精通」「中からも外からも企業のことを熟知」「中小/ベンチャー/起業支援の実績」。
スノーボードとサッカーとブラックコーヒーとONE PIECEが好きです。

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