スーツ代は経費になる?ポイントや勘定科目を解説

これって経費になる?シリーズ。

個人事業主でも会社の社員でも、業務をする際にスーツを着用する機会は多いと思います。

「スーツは業務上必要なものだし、当然経費になるよね?」そんな疑問にお答えしたいと思います。

結論から言うと、経費にするのは難しい んです。

スーツ代を経費にするのが難しい2つの理由

プライベート用と仕事用の区別が明確につきづらいから

作業着や制服などであれば文句なしに経費になります。
それは、職務上の必要があって着用しているもので、仕事以外で着用するものではないため、生活用の衣服ではなく「業務の遂行上必要である」と判断できるためです。

一方、スーツはプライベート用と仕事用の区別が明確につきづらいものです。例えば、「仕事でしか着ないな」と思っていても、友人や親族の結婚式で着たり、子どもの授業参観で着たりなど、プライベートで着る機会がまったくないわけではないと思います。

プライベートでも使用する以上、経費にするのは難しいです。

過去に似た事象で経費性が否認された判例があるから

実はこの判例を根拠に、「スーツ代は経費にするのが難しい」とよく言われています。

昭和49年5月30日の京都地裁で、「被服の種類や品質は個人の嗜好に左右され、誰もが利用することから、一般的に個人的な家事消費に該当し経費としては認められない」という判決が下されました。

原告主張の各費用が必要経費を構成するか否かについては、次のとおりに解される。

1.被服費、クリーニング代、散髪代について思うに、被服はひとり給与所得者に限らず、誰もが必要とし、その種類、品質、数量等は個人の趣味嗜好によつてかなりの差異があり、耐用年数についてもかなりの個人差が存するものであるから、被服費は、一般的には、個人的な家事消費たる家事費に属すると解するのが相当である。

昭和49年5月30日京都地裁  昭和41年(行ウ)第10号

このようにスーツ代(被服代)についての詳細は個人の嗜好に左右され、誰もが利用することから一般的に被服費は個人的な家事消費に該当し、経費としては認められないという判決です。

この判決を根拠として、一般的にスーツ代は経費算入できないと考えられています。

ただし、スーツ代は絶対に経費にならない、わけではない

どういう場合に経費になるのか?

上記の判決には続きがあり、

主に家庭において着用するのではなく、これを除き、その地位、職種に応じ、勤務(ないし職務)上一定の種類、品質、数量以上の被服を必要とする場合には、その被服費の支出は勤務についても関連するものとして、家事費ではなく、家事関連費であると解するのが相当である。

背広等の被服費の支出も、勤務上必要とした部分を、他の部分と明りように区分することができるときは、当該部分の支出は必要経費になると認める余地がある

昭和49年5月30日京都地裁  昭和41年(行ウ)第10号

また、所得税法施行令第96条では、スーツ代などの家事費について

家事上の経費の大部分が業務遂行上必要で、その必要部分を明らかに区分できる場合は必要部分の経費は損金算入できる

所得税法施行令第96条

と記載されています。

つまり「業務の遂行上直接必要であったことが明らか」で「業務遂行と私的な用途を明らかに区分することができる場合」は経費にしても良いということです。

しかし1つのスーツを仕事に使ったのが何割で、私的に使用したのが何割というように区別をするのが難しく、この区別ができない限りは経費算入することはできません。
逆に言えば業務用に購入したスーツを【明確に】仕事にしか使わず、スーツを業務上使用する必要性に合理性があるのであれば、そのスーツ代は経費計上できるということです。

その場合の勘定科目は?

スーツ代の仕訳には勘定科目としては、「消耗品費」を使用します。

まとめ

業務上必要だと「明確な」説明ができるかどうかがポイントです。
税務署に疑われたときに、事実に基づく論理的な説明で否定できるのであれば、基本的に問題はありません。

ただし、説明に自信を持てず税務署からの指摘が怖いのであれば、経費に含めないほうが無難だといえます。

税金を抑えるにこしたことはないと考える方は多いですが、脱税を疑われるリスクのほうが高いため、リスクをどこまで取れるか といった観点のお話にもなってきますので、慎重な判断(常識の範囲内で)が求められると思います。

脱税はダメ、ゼッタイ。

「このようなスーツの使い方なんだけれど、経費になる?」のようなお悩みをお持ちの場合でも、お気軽にお問合せいただけますと幸いです。

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この記事を書いた人

仲田 峻
仲田 峻
公認会計士・税理士・ITストラテジスト

山梨県、仲田公認会計士・税理士事務所の代表です。「企業・経営者の町医者」をテーマに、経営の身近な相談相手でいたいと思っています。
強みは「クラウド会計と経営・ITに精通」「中からも外からも企業のことを熟知」「中小/ベンチャー/起業支援の実績」。
スノーボードとサッカーとブラックコーヒーとONE PIECEが好きです。

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