「租税公課」勘定から感じた会計と税務の違いについて(税理士選びの参考になる?かも?)
税務業務をしていて驚いたシリーズです。
前の税理士さんから引き継いだお客様の帳簿を見ると、租税公課の金額が大きい。
感覚的に金額が大きくなる科目ではないので、「ん?」と思い中身を見てみました。すると、原因が分かりました。
3つの原因がありました。
会計感覚的に違和感のある処理で、詳細は後述していますが、「結局別表4で加算調整すれば良く、決算書上の表示は問題ない」ということです。税務と会計の近いを、まざまざと感じました・・・。
そもそも租税公課とは?
法人税・住民税・事業税を除く国や地方税等の「租税」(税金)や、国・地方公共団体から課せられる交付金や会費などの公的な課金である「公課」を合わせた勘定科目のことを言います。
販売費及び一般管理費(いわゆる販管費)に属し、営業利益に影響を与えます。
定義から入ると分かりづらい科目ですが例示を見るとなんとなく分かります。完全に列挙することはできませんが、下記のような費用が「租税公課」となります。
- 印紙税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 自動車税
- 固定資産税
- 免許証などの身分証の発行費用
- 各種行政サービスの手数料
- 税込処理をしている際の消費税
原因① 法人税・住民税・事業税が「租税公課」に計上されていた
まず、前期の確定法人税・住民税・事業税が、当期支払時に「租税公課」として計上されていました。
本来であれば
- 前期に
- 法人税、住民税及び事業税(税引後利益と税引前利益の間)として計上
するのが、会計的には(企業会計原則的には)合っています。それが、
- 当期に
- 租税公課(営業利益に影響を与える販売費及び一般管理費)として計上
されていました。期ズレ&勘定誤りです。
なお、調べると税務上は「どっちでもよさそう」です。要は、その期の申告書上で、損金に算入されないように調整さえすれば良いということですね。
ただ、それでは、経営者として、本業から出る利益=営業利益を見誤ります。
この処理だと、前期の法人税が当期の営業利益を減らしているわけですから、意味が分かりません。
営業利益が意味をなさない金額になってしまうので、会計上も適切に処理するべきと思います。
原因② 税込処理をしていて消費税が「租税公課」に計上されていた
実はこれは合っている処理です!(知らなかった・・・)
「消費税課税事業者」で「税込処理」をしているパターンを見たことがなかったので知らなかったのですが、そうらしいです。
税抜処理であれば、仮払消費税・仮受消費税を使ってBS側のみで処理しますが、
税込処理では消費税を「租税公課」として販売費及び一般管理費の枠内で処理をします。
ただ、これは営業利益に影響を及ぼしません。むしろ租税公課として処理することで、税抜処理と同じ営業利益を表示する効果があります。
いやー、知らなかったー!勉強、勉強です!
原因③ 延滞税など税務上損金計上できないものが「租税公課」に計上されていた
延滞税や延滞金・加算税や加算金・交通違反時に発生する罰金など罰則に該当するものは、税務上、経費として認められません。そのため別表4で加算(税務調整)しますが、それを租税公課として計上していました。
これは間違いではありません。租税公課として計上してもよいものです。
ただし、他の経費として認められる租税公課と混同してしまうと、税務調整の際に誤りが発生する元なので、できれば別の勘定科目で、例えば「雑損失」などで計上したほうが良いと、個人的には思います。
まとめ
「税務上は問題ない」ということで、このような処理をされていたのだと思います。それなら良いのか?と思う所もありながら、公認会計士としては違和感があります。
「正しい経営数値を出す」意味では間違った処理です。ただ、税務上は問題ない。
ということは、お客様となる経営者様とよく議論をして、それこそコスパ・タイパの観点から、お客様に合った処理が正解なんでしょうね。
なお、この件を通して、「正しい経営数値」の感覚に強みがあるのは、やはり公認会計士だからこそと思いました。
そういった意味で、「税理士」と「公認会計士・税理士」とでは、若干アドバイスが異なる領域が存在するような気がします。
これを読んでいただいた方の、おすすめ税理士選びの一助になれば幸いです。
この記事を書いた人
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公認会計士・税理士・ITストラテジスト
山梨県、仲田公認会計士・税理士事務所の代表です。「企業・経営者の町医者」をテーマに、経営の身近な相談相手でいたいと思っています。
強みは「クラウド会計と経営・ITに精通」「中からも外からも企業のことを熟知」「中小/ベンチャー/起業支援の実績」。
スノーボードとサッカーとブラックコーヒーとONE PIECEが好きです。
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